I小学童 お話会おはなしのつどい

October 04, 2011

松居直さん in ナルニア国

2011年10月4日(火)14:00~15:30
銀座教文館ナルニア国で開催された松居直さんの講演会に行ってまいりました 

七わのからす―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本) ながいかみのラプンツェル―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ) うできき四人きょうだい―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本) しあわせハンス―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)
 フェリクス・ホフマンの絵本のうち、今春、限定復刊された4点。

 今秋、ナルニア国にて、スイスの画家フェリクス・ホフマン(日本ではグリムの昔話の画家として有名)の生誕100年を記念した催しが企画されています。その一つが今日の講演…これまで日本に数多くのホフマン作品を紹介してこられた福音館書店相談役・松居直氏の講演会。
 かつて、2010年5月の「上野の森親子フェスタ」(JPIC主催)での今江祥智さんとの対談を拝聴したことがありますが、松居直さんは背筋がしゃんと伸びた紳士で、何とも佇まいが素敵な方でした。その教養の深さは隠しようもなく溢れでてきて、大変魅力的な方です。再びお話を伺えるチャンスを得て、嬉しく、心待ちにしておりました
 
 フェリクス・ホフマン生誕100年記念 
松居直氏講演会 昔話絵本を編集するということ
 
松居直さん(photo:yomiuri.co.jp )


 まずは、ナルニア国店長さん(店長って言うのかな?)の読み語りでスタート。
おおかみと七ひきのこやぎ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)

 松居直さんは、「講演会ではなくて、おしゃべりです」と語り始められ、この本になぞらえてホフマンについて、さらに絵本の果たす役割などについてお話してくださいました。絵本の作り手としての深い思いや、ご自身の教養の深さを随所に感じさせてくれるお話に、しばしうっとりと聞き入っておりました

 以下、私自身の健忘録でございます。講演録ではありません!順不同ですし、私自身のためのメモですので、ご覧の方にはご容赦くださいませ青字は、松居直さんのお言葉

《フェリックス・ホフマンについて》

 画家の絵には、沢山の「いたずら」がしてあるんです。
このいたずらには、文以上のリアリティがあります。


(例えば)
おおかみと七ひきのこやぎ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)
  • ある幼稚園児が「お父さんはどこへいったの?」と質問。確かに文には登場しません。ところが、絵の中では①部屋の写真(絵)、②裏表紙に描かれているのを見つけました。
  • ラストページの家族団らんの様子。文章にはない場面が、幸せなイメージを与えてくれています。
ねむりひめ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)
  • 料理番の男の子の「帽子」は、100年の眠りの間に、茨に絡め取られています。
  • ホフマンさんが次女クリスティーヌのために描いたものなので、彼女の好きなモノが随所に登場します。(猫・ケーキ)特に最後のウェディングケーキは、文にはない場面です。
 ホフマンさんの(あるいは優れた画家さんの)極意とは?
絵本の絵には、「線」「形」「構図」「構図を通しての変化」と「連続性」これが大事。
(色は物語を弱めてしまうもの。パッと目をひくばかりのものでは駄目。)
発想の仕方や言葉への感覚も重要。
なにより、絵を描く人がどれだけ物語に入り込めているかが決め手です。

ホフマンさんは、絵本を出版するために描いたわけではなく、我が子、我が孫のために描いていたそうです。だからこそ愛情あふれ、生活感の豊かな絵本になっていることを知りました。
詳しくはこの本を!(今なら、ナルニア国にて購入可能)
ホフマン
 小さな絵本美術館発行


《絵本について 子どもについて》
 
 子どもは冊子を読むんです。「絵」を隅々まで読む。
絵は全部言葉です。
「耳で聞く言葉」と「目で見る言葉(絵を読むこと)」が一つになった時、活き活きとした世界が見えてくる。これが想像(空想)するということ。その時に、子どもの心が育つのです。

 ところが、子どもの「絵をよむ」「聴く」という力が弱くなっている。
それは、絵をしょっちゅう見せられているから・・・TVです。意識せずに浴びせられたもの、しかも言葉は人間の言葉ではなく「機械語」です。これでは心がわからない。直接、人間が語るときにイメージは伝わってくるもの。

 人は言葉で考え、伝えている。日本語を失うことは、生きる力が失われるということ。
人は、言葉無しでは生きられないのです。

 自殺、いじめなどの増える理由は、「言葉」が失われているから!
言葉を失うと、人の気持ちがわからないんです。



 また、子どもの中に生活感が乏しくなっている。
 石井桃子さん曰く
『子どもの本は、目に見えるように書かないとだめです。』
 星の王子様のせりふ
『人間にとって大切なモノは目にみえない』
事実でなくても、真実が描かれていることを知る・・・それが読書です。

 
 (海外の絵本の)鍵は日本語・・・翻訳なんです。
瀬田貞二さんは、話している時の日本語がすごかった。(万葉の頃からの)日本語の調べが生きているんです。
三びきのやぎのがらがらどん」がベストセラーなのは、瀬田貞二さんの訳だったからです。
また、内田莉莎子さん訳の「おおきなかぶ」しかり。翻訳とは、日本語として最高の表現をすることです!



 子どもの心と言葉を育てる。それが絵本の使命です!

読む人の上手下手はどうでもいい。大事なのは心を込めて読むこと!(読み手の)大人が作品に共感し、思い描いて、言葉で伝える、という絵本体験をさせることです。

 (語り部サツさんを例に出されて)
サツさん曰く、『言葉で覚えているのではございません。見えるから、言葉でお伝えするのです。』
絵本も、読み手が自分の中に世界を描いているかどうか、これが勝負!(特に昔ばなし絵本はそうです。)


昔話絵本の魅力について、詳しくはこの本を!
絵本を読む
(この本にサインをいただきました

随所に絵本作りへの情熱が感じられるお話でした。
松居直さんの子どもの本の編集者としての「絵」へのこだわり、「日本語」へのこだわりがあったからこそ、私たちの生活に絵本が根づいているのだと思います。

お話からは、ご家庭での父親ぶりも垣間見えました。お子様に本を読むときには、「読むのも勝手、聴くのも勝手」を流儀となさっていたとか。押しつけず、子どもの興味や気づきを尊重されていたのでしょう。それこどが、子どもの言葉と心を育てるのでしょう


講演は40名定員というのに、会場では知っているお顔との嬉しい再会がありました
それも3人も
お出かけすると、必ず嬉しい出会いがあるんですよねぇそれは、人のこともあれば、物や風景でもあるんですけれどね。今日同席させていただいたマーガレットさんみどりさんのブログも御覧くださいませ~ 








my02_ehon_wo_kakomou at 22:00│Comments(0)TrackBack(0) 講演会記録 

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